この記事は【梅雨時の食中毒】「感染型編」の続きです。
前の記事では腸の中で増殖する感染型の食中毒についてをメインで紹介しました。
今回は食品の中で増殖した細菌が発生させた毒素を食べることでおこる毒素型の食中毒についてご紹介していきます。
有名な黄色ブドウ球菌や、自然界で最も強力と言われるボツリヌス毒素、1歳未満の乳児にハチミツを与えてはいけない理由など、毒素型の食中毒にも色々なタイプのものが存在します。
3回にわたっておおくりしてきた食中毒シリーズはこれで一旦終了です。ここまで目を通して頂いてありがとうございます。
それでは食中毒について、最後のお話しを始めていきたいと思います。
毒素型食中毒の特徴
それでは、毒素型の食中毒についてです。
黄色ブドウ球菌
普段から人の皮膚にも存在している菌ですが、食品の中に入ることによって毒素を発生させてしまいます。
傷口や化膿してしまったところには黄色ブドウ球菌が多くなる傾向があるので、傷口をきれいに洗ってから食品に触るか、できれば手袋をするなどの対応をすると良いでしょう。
菌は加熱で殺菌できますが、毒素は熱に強いので、加熱しても食中毒になってしまいます。熱への強さは100度の加熱を30分間行っても無毒化できないほどです。
発生してしまった毒素を無毒化することは難しいので、毒素を作らせないようにしましょう。熱には強いですが、10度以下では毒素を作り出すことができないので、食材はしっかりと冷蔵庫で保管するようにしましょう。
症状は嘔吐、腹痛、下痢と言った、いかにも食中毒と言ったものです。
潜伏期間は1時間から5時間程度なので、口に入ってから早めに症状が出ます。
ボツリヌス菌
その毒性は強力で、たったの0.5kgで世界の全人口の致死量に達してしまうとのことです。分かりやすくすると、サスペンスドラマなどで有名な青酸カリが1gで5人の致死量ですが、ボツリヌス毒素は1gで100万人という桁違いに強力な毒素で、自然界で最も強力な毒素です。
ボツリヌス菌は高温に耐えてしまいますが、ボツリヌス毒素は100度で2分程度加熱するとで毒性を消すことができます。料理の際はしっかりと加熱することで、この強力な毒素から身を守ることができます。
症状は重く、呼吸筋の麻痺により命を落とすこともあります。ほかにも言葉がうまく話せなくなってしまったり、視力の低下など、食中毒のイメージをくつがえすような症状が現れます。
潜伏期間は12時間から36時間ほど。
空気に触れない食材ほど注意が必要で、缶詰やビン詰、レトルトの食品などもしっかりと加熱する必要があります。
乳児ボツリヌス症「乳児にハチミツは禁止」
1歳以下の乳児には乳児ボツリヌス症という怖い病気があります。これはハチミツの中に入っているボツリヌス菌が腸内で増殖し、毒素を発生させてしまうことでおこってしまいます。
成人の人にとっては腸内で菌の増殖が抑えられるので問題ありませんが、乳児は菌の増殖を抑えることができないので、ハチミツは与えないように注意しましょう。
乳児ボツリヌス症の初期症状として分かりやすいものとしては便秘です。普段からおむつを替える回数はだいたいわかっていると思うので、便秘だと感じた時には赤ちゃんの異変を疑いましょう。乳児ボツリヌス症ではなかったとしても、便秘は赤ちゃんからの何かの合図です。
他にも活気がない、泣き声が弱い、哺乳不良、よだれが多い、首のすわりが悪くなった、眼球運動の麻痺や無呼吸など、言葉では異変を教えてくれないので、いつもとの違いに注意しましょう。
重要! |
1歳未満の乳児にはハチミツを食べさせない! |
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セレウス菌
セレウス菌の毒素には下痢を引き起こすタイプと、嘔吐を引き起こすタイプの2種類に分けられます。どちらも腹痛があり、下痢型は下痢の、嘔吐型は嘔吐の症状になります。
潜伏期間もそれぞれ違い、下痢型は8時間から15時間ほど、嘔吐型は1時間から5時間ほどが潜伏時間となります。日本ではほとんどの場合嘔吐型の症状が多いようです。
嘔吐型は焼き飯などの米を使った料理や麺を使った料理、下痢型は肉を使ったスープ類、プリンなどの食品が原因になることが多いようです。
どちらの症状も2日ほどで自然に回復し、食中毒の症状としては軽いものになります。
嘔吐の毒素には普通の加熱調理では毒素を消すことは出来ませんが、下痢の毒素の場合は加熱調理で無毒化することが可能です。
梅雨時の食中毒 まとめ
梅雨時におこる食中毒は細菌によるものが多いので、菌を発生させないために、食品を適切な温度で管理することや、加熱することで食中毒のリスクを減らしましょう。
ノロウイルスなどのウイルスによる食中毒は冬に発生することがあるので、冬には冬の対策を行いましょう。
基本的な食中毒対策についてはこちら
過剰に意識すぎる必要はないですが、少し知識として入れておくのも良いでしょう。
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