夭折のSF作家・伊藤計劃のデビュー作『虐殺器官』は、他遺作『ハーモニー』、『屍者の帝国』とともに「Project Itoh」としてアニメ映画化が企画されていました。今作は公開延期を迎えるものの、最後の作品として今年冬、公開が決定となりました。
今回は、その見所について紹介します。以下、原作での内容について触れます。
虐殺器官は最高のキャストとスタッフで送られる!
制作会社「マングローブ」が経営破綻をしてしまい、どうなるのかと思われた今作ですが、「ジェノスタジオ」が制作を引き継ぎ、公開が決定しました(そのため、すでに上映された『ハーモニー』、『屍者の帝国』が予定変更で先に上映となりました)。
監督は機動戦士ガンダムWのキャラクターデザインなどを手がけた村瀬修功。キャストは主人公クラヴィスを中村悠一、クラヴィスの相棒ウィリアムズを三上哲、クラヴィスの部隊の隊員アレックスを梶裕貴、リーランドを石川界人、そして物語の鍵を握る言語学者ジョン・ポールを櫻井孝宏、といった豪華キャストが起用されています。声優をあまり知らないという人でも、聞いたことがある人たちが勢ぞろいです。
主題歌は他アニメ作品の雰囲気に合った曲を歌うEGOIST。曲もすでに発表されており、タイトルは「リローデット」。壮大な音楽と、世界観に合った曲になっており、これがようやくスクリーンで聴けるのがとても楽しみです。豪華メンバーによって作られたこの作品、アニメとひとくくりにするのはもったいない作品であること間違いなしです!
虐殺器官は緊迫感のある世界観に注目!
今作の主人公たちはアメリカ人、紛争が巻き起こる世界各地を飛び回ります。なので主軸はアメリカになりますが、ところどころSFらしいシーンがすでに公開されているPVにも見られます。特にクラヴィスたちアメリカ情報特殊検索群i分遣隊たちは各地で起こる戦闘に巻き込まれますが、戦闘シーンの迫力には注目したいですね。映像だからこその緊張感というのも、あると思います。原作にも登場したクラヴィスたちの出撃用のポッドなど、SFならではのアイテムがどのように描かれるのかも気になります。
各地で起こる「虐殺」をクラヴィスたちは止めることができるのか、そして虐殺の裏側に潜むジョン・ポールの目的は何なのか……! 原作で展開を知っていたとしても、映像ではまた違うどきどきがあるのではないでしょうか。
虐殺器官のシナリオはどこまで映像になるのか!
何より原作に漂う切ない雰囲気と、深みをどこまで映像として表現できるのかが非常に楽しみです。私も原作が大好きで、戦闘やテロリズムで展開していくだけでなく、もっと深い、人間の言葉や本質に触れている描写、特に感情の変化をあまり見せないクラヴィスが時折見せる母との回想シーン、アレックスの「地獄はここにあります」というセリフ、SFなのにどこかリアリティのある設定、そして衝撃のエンディング、一つ一つは重みのあるものとして作品を構成しています。
そんな最高の物語が、映像として表現されること、また映像だからこそ魅せてくれるものがあるのではないかと注目です。深い物語が好きな人には是非ともおすすめしたいです。
まとめ
「Project Itoh」の最後にして最高の作品である今作ですが、詳細はこれからまたどんどん明らかになってくるとは思います。先日10月25日東京国際映画祭のレッドカーペットにはクラヴィス役の中村氏とジョン役の櫻井氏が登壇、新情報もまだまだ発表されるとのこと。また、原作「虐殺器官」は実写映画化も決定。これからどんどんこの作品は熱くなるのではないでしょうか。伊藤計劃の最初にして最高の物語、必見です!